発明原理 No.13 | 逆にする

ボルト斜め入り防止

自動車の組み立て工場などではボルトを機械を使って自動で締め付けます。しっかり締め付けたかどうかはボルトが回らなくなったかどうかで確認します。

しかし、ボルトがねじ穴に対して斜めに入ってしまった場合は、適切な締め付けができていないにも関わらずボルトが回らなくなります。これでは不良品を作ってしまいます。

そこで、ボルトを締め付ける前にボルトを反対回転させるということがされています。反対回転により、ボルトが仮に斜めに入っていてもまっすぐになります。この工夫は昔から取り入られていましたが、近年では逆回転したときに発生する振動を検知して、ボルトがまっすぐになったことを確認する仕組みも使われています。

ボルトを逆転させ、発生する振動からボルトの正立を検知する
出典:https://www.daiichi-dentsu.co.jp/dcms_media/other/Update_Report_NO210910-5A-JP.pdf
ボルトが正立した状態で逆回転した時に発生する振動
出典:https://www.daiichi-dentsu.co.jp/dcms_media/other/Update_Report_NO210910-5A-JP.pdf

第一電通
https://www.daiichi-dentsu.co.jp/dcms_media/other/Update_Report_NO210910-5A-JP.pdf

縮ませるために膨らます マッキベン型人工筋肉

マッキベン型人工筋肉というものがあります。これは、繊維で編まれたチューブの中にゴム風船が入ったような構造をしています。

マッキベン型人工筋肉の構造
出典:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/img_news/2017/2017012601_01.jpg

このゴム風船の内部に空気を送ると、人工筋肉は幅方向に膨らみ、長手方向には逆に縮みます。

マッキベン型人工筋肉が縮む様子
出典:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/img_news/2017/2017012601_02.jpg

ただのゴムチューブでは、幅方向にも長手方向にも膨らみます。この人工筋肉はスリーブがあるために、その網目の作用で長手方向には縮むのです。


長手方向に縮ませるために幅方向に膨らましています。反対のことをする、という解決方法です。

株式会社ブリヂストン
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2017012601.html

ネバネバの納豆をパックに詰める

ネバネバの納豆をパックに小分けするのは大変です。そこで、発酵前の大豆をパックに入れて、パックの中で発酵させます。

発酵する前の納豆
出典:https://natto.or.jp/img/make/pic_22.jpg
発酵する前の納豆をパックに入れている様子
出典:https://natto.or.jp/img/make/pic_11.jpg

行程の順番を入れ替える(逆にする)、という解決方法です。
今回の場合は、発酵させた後でパックに入れる代わりに、パックに入れてから発酵させています。

全国納豆協同組合連合会
lhttps://natto.or.jp/make/index.html

ぴったりフィットの緩衝材

段ボール箱に入った家電製品などを衝撃から守るために、発泡スチロール製の緩衝材が使われます。

輸送中の製品を保護するために使われる発泡スチロール製の緩衝材
出典:https://sankyo-carton.com/wp-content/uploads/2020/04/%E7%B2%BE%E5%AF%86%E9%83%A8%E5%93%81%E7%99%BA%E6%B3%A1%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E7%B7%A9%E8%A1%9D%E6%9D%90.jpg

この緩衝材は製品の形に合わせた複雑な形をしています。この複雑な形は型を使って作られますが、少量生産の製品や、一品もののために型を作るのは現実的ではありません。

そこで、複雑な形状に成形した緩衝材を段ボール箱に入れる代わりに、箱のなかで緩衝材を発泡させて、製品の形状に合った形にする方法が考え出されました。

出典:http://www.toyotec-intl.co.jp/corprate/wp-content/uploads/2021/03/7354465d7cf07a79922e2852cc9e3f67-670×714.png

使われるのは発泡ウレタンです。この発泡ウレタンは、2種類の液体を混合して作ります。混合してしばらくすると発泡が始まります。

まず、2種類の液が隔離された状態で入っている袋を強く押します。すると、袋の中で液体が混合されます。そして発泡が始まる前に、その袋を、製品を入れた段ボール箱の中に入れます。

段ボール箱の蓋を閉じて待っていると、段ボール箱の中でウレタンが発泡し始めます。このときウレタンは、製品形状に合わせた形に発泡し、その形で固まります。

出典:https://youtu.be/jXWpAs_Nbb8

発泡スチロール製の緩衝材は、発泡後の材料を緩衝材として組み付けることで目的を達しています。一方で、この製品は「組み付ける」と「発泡させる」の順番を入れ替えることで、製品形状に合わせた緩衝材を作るという目的を達しています。行程の順番を入れ替える(逆にする)、という解決方法です。

株式会社トヨテック
http://www.toyotec-intl.co.jp/archives/4072

金属を割いてつくる金具

複数の部品を組み合わせて作っていた金具を、一つの部品の一部を割くという方法で作ることにより、低コスト化に成功した例です。

L字型の金具を背中合わせで繋いだような形状の金具があります。従来は、二つのL字型の部品を接合して作っていました。関プレスはこれを、ひとつの部品を割いて作りました。

従来2枚の鉄板を溶接して作られた金具を、1つの金具の一部を割いてつくる
出典:http://www.sekipress.jp/img/warisaki/warisaki/warisaki.png
金属を割く
出典:https://cdn.jimo-navi.com/uploads/2014/08/33d77460659cfca3c67da18bf3dcbfda.jpg

反対のことをする、という解決方法です。今回の場合は、接合する代わりに、一つの部品を分割しています。

株式会社 関プレス
http://www.sekipress.jp/warisaki_warisaki.html

膨らましてから吸引する フィルムの真空成形

真空成形は、加熱して柔らかくした樹脂製のフィルムを型に吸い付けて成形する成形方法です。型が安く済むので、生産数が少ない製品や、大きなサイズの製品に適しています。

真空成形で樹脂フィルムを成形している様子
出典:https://koshin-p.jp/w/wp-content/uploads/2020/06/568c5a2921c183bc2e0880680bde2b42-1-1024×724.jpg

この真空成形では、フィルムを型に吸い付ける前に、逆に空気で膨らます場合があります。これにより、より良い成形ができる場合があります。

単純にフィルムを型に吸い付けて成形した場合、材料の伸びが不十分で成形不良が起こることがあります。その場合、フィルムを型に吸い付ける前に、空気で型の反対側に一回膨らまします。これにより、フィルムが十分伸びます。

その後は、通常の真空成形と同様に、型に吸い付けて成形します。フィルムを一度膨らまして伸ばしたことにより、型に吸い付ける際の材料不足が解消します。

真空成形で樹脂フィルムを成形するときに、いったん樹脂フィルムを膨らませる
出典:https://www.uepura.com/img/shinkuseikei/shi_sh.png

吸い付けて成形したいのに敢えて一回膨らまします。反対のことをする、という解決方法です。

株式会社光伸プランニング
https://koshin-p.jp/2020/06/415/

植木プラスチック株式会社
https://www.uepura.com/shinkuseikei.html

噴き出す勢いで吸い込む

工場でワークの搬送に使われる真空吸着は、文字通り真空引きでワークを吸着する方法です。

一方、空気を噴き出すことでワークを吸着する方法もあります。これはベルヌーイチャックと呼ばれ、半導体工場でウエハを運ぶのに使われています。

空気が速く流れる場所では、周囲より圧力が低くなります。これは、スピードを出したトラックが近くを通るとトラックに吸い込まれそうになるのと同じ原理です。

ベルヌーイチャックでは、勢いよく噴出させた空気を搬送するウエハとの間に流すことでウエハを吸着します。チャックとウエハの間には常に空気があります。チャックとウエハの接触がないため、ウエハの損傷や汚染を抑制できることがメリットです。

ベルヌーイチャックの仕組み
出典:https://www.jel-robot.co.jp/products/BERNOULLI_CHUCK.html

同じ原理は、理科の実験でお馴染みのアスピレーターにも使われています。

アスピレーターは、水を勢いよく出すことで圧力の低い状態をつくり、空気を吸い込みます。

出典:https://ssl.sbw.eyela.co.jp/archive/download/eyela_aspirator.pdf


株式会社 ジェーイーエル
https://www.jel-robot.co.jp/products/BERNOULLI_CHUCK.html

東京理化器械株式会社
https://ssl.sbw.eyela.co.jp/archive/download/eyela_aspirator.pdf

パイプに発泡体を詰める

自動車のピラー
出典:https://www.honda.co.jp/factbook/auto/ACCORD/200812/img/11_14.jpg

自動車のピラー内部に樹脂を充填することで、ボディーの剛性や遮音性を高めることができます。しかし、複雑な形をした空間に、その空間ぴったりの部材を挿入することは困難です。

内部を発泡させた樹脂で充填する
出典:https://sika.scene7.com/is/image/sika/glo-acoustic-SikaSeal-product-2:3-2?fit=crop%2C1&wid=600&hei=400&fmt=webp-alpha


そこで、自動車の製造工程では、発泡前の樹脂を両面テープ等でピラーの中に固定し、その後で加熱によって樹脂を発泡させてピラー内に充填させます。

発泡樹脂が発泡する過程
出典:https://sika.scene7.com/is/image/sika/glo-acoustic-SikaBaffle-Tape-Product-5:3-2?fit=crop%2C1&wid=600&hei=400&fmt=webp-alpha

工程の順番を入れ替える(逆にする)、という解決方法です。

今回の場合は、発泡させた材料をパイプに詰める代わりに、パイプの中で発泡させています。しかし、発泡させるために自動車を加熱するのは大変ではないでしょうか?

実は追加の加熱工程は不要です。自動車の塗装は、加熱して硬化させます。すでにあるこの加熱工程を利用してピラーの中の材料を発泡させます。

Sika Automotive
https://automotive.sika.com/ja/solution-products/acoustic-systems/cavity-sealing.html

切りくず混入防止

マヨネーズが入っている柔らかい容器は、ブロー成型で作られます。ブロー成型した後の容器は、口が開いていない状態です。そこで、容器の先端を切って口を開ける必要があります。刃物で容器の先端を切って口を開けるのですが、このとき切りくずが容器の中に入ってしまうと、マヨネーズに混入してしまいます。

そこでマヨネーズ工場では、容器を切るときに容器を天地逆さまにします。もし切りくずが発生しても、中に入ることがないようにするためです。

マヨネーズの容器を上下逆さまにした状態で口部をカットすることで切りくずが中に入ることを防ぐ
容器にマヨネーズを充填している様子
出典:https://www.kewpie.co.jp/mayonnaise/product/manufacture.html

逆さまにする、という解決方法です。

キユーピー株式会社
https://www.kewpie.co.jp/mayonnaise/product/manufacture.htm